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てびき

イヤホンガイド解説 おくだ健太郎

 昨年の六月に名古屋の料亭河文さんで行われた名古屋をどりキックオフパーティーで初めて西川千雅さんとお会いした時に京都の都をどりがイヤホンガイドを始めたことをちらっとお伝えしたんですが、数週間後には、名古屋をどりでも実施する、と発表されました。その決断のスピードはすごいと思いましたし、その意気込みに応えたいと思いました。

 歌舞伎や舞踊のガイドする対象として僕がメインにするのはそれこそ初めて歌舞伎をご覧になるような人。たとえば小学生でも、好奇心のアンテナがつよいお子さんなら、聞きながら舞台の中身にじゅうぶん食いついていける、というのが、目指しているイメージです。

 歌舞伎公演だと、踊り、お芝居、踊りというような組み合わせになるので、一日の構成の中でカテゴリーが切り替わるから自然にお客さんの意識も切り替わるんですが、名古屋をどりは全部踊りだから意識してないと単調になりがちなのです。

 解説の中身をどうしようかということじゃなくて、しっとりした感じとかすごくテンポが軽快な感じ、じっくりゆるやかに踊りこんでくる部分など踊りの変化をなるべく感じ取ろうと思っています。雰囲気があっていないと内容は正しくてもぶち壊しということがあるわけです。

 そのためにも原稿は手書き、まぁ、パソコンが苦手なだけですが(笑)。手書きには自分の生理的なリズムが反映されているので、それをいかに自分のしゃべりとしてこのコメントはここで出すという設計図をつくります。

 中身がどんどんマニアックになっていくとそれだけ初心者にとっては堅苦しいものになるし、観ながら聞くものとしては、解説に気をとられすぎてしまいます。

 今、何て言ったのかな、と一瞬でも感じさせたらダメなんです。違和感なくすーっと入っていくにはどういう言葉遣いで喋ったらいいか、中身よりそちらですね。

 イヤホンガイドのサービスがあるということは、その日のお客さんはイヤホンガイドを聞いている人と聞いてない人に二分されます。

 ともするとイヤホンガイドでしか聞けない情報を話すことでお得感を出したくなりがちかもしれません。

 でも僕の考えは逆。イヤホンを聞かなくても自分で舞台に集中できている人の感覚を、劇場全体に行き渡らせたいのです。

 イヤホンガイドを使っていない人を置いてきぼりにして、使ってる人だけにメリットがある、ではなくて、イヤホンガイドに頼らなくても舞台を楽しめている、という人の感覚を、イヤホンガイドを使っている人のなかにもなんとか作りたい。

 環境を作ってさしあげたいんです。ご自分で自然に舞台へ気持ちを持っていける環境を、イヤホンで作ってさしあげたいんです。手助けがしたい。

 最初のうちはイヤホンガイド使ってましたけど、この頃無しで観るようになりました、というふうに、イヤホンガイドから巣立つ方がいてもいいものなんですよね。主導権はお客様にあるんです。

 集中できるコツというか、そういうものを感じ取ってもらうものをつくりたいと思います。

 

おくだ健太郎

1965年 名古屋市うまれ。大学入学で上京後、一年半のアメリカ生活を経て歌舞伎に熱中。 アメリカでのジャズ研究家との交流が大きく作用している。 歌舞伎座の立ち見席に通いつめ、大向こうにうちこむことで 歌舞伎への愛情を決定的なものとする。イヤホンガイドの従業員を経て解説担当者となる。 とくに売り場、オペレーター、そして解説者、すべてを兼ねて日本各地をまわった巡業経験はさまざまな意味で精神的な支柱となる。NHK教育テレビでの歌舞伎の入門番組や東工大世界文明センターなどで講師を歴任。 ミラノ スカラ座の来日公演などではオペラの字幕も経験。現在、歌舞伎公演のイヤホンガイド、 雑誌「ディスカバー ジャパン」へのコラム掲載、 カフェトーク「おくだ会」などで 歌舞伎のたのしさを発信。 ピアノ弾き語りで表現する 「勧進帳」など、 ユニークな活動にもとりくむ。大向こう「寿会」の会員でもある。

http://okken.jp

 

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